こんにちは!長崎大学熱帯医学研究会です。
2024年も残り一ヶ月を切りました。今年も私たちは、国内外で熱帯医学について学び、多くの経験を積むことができました。なかでも毎年力を入れている8月のケニア研修について振り返ります。
長崎大学には熱帯医学研究所があり、「感染症研究に強い」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。特に、感染症が突発的に流行し、公衆衛生対策の整備が十分でないケニアでの研修は、現地の実情を肌で感じる貴重な機会です。アジア・アフリカ感染症研究施設をケニアに拠点として構える長崎大学で学ぶ私たちにとって、この国の医療や公衆衛生の状況、人々の暮らしと向き合うことは、感染症と共存する地域社会の課題や現地で求められる医療の在り方を深く考える機会となり、日本では得られない多くの学びをもたらしてくれます。
今年の研修参加者は4名で、ナイロビ(Nairobi)、ヴォイ(Voi)、モンバサ(Mombasa)、クワレ(Kwale)、ディアニ(Diani)、ムビタ(Mbita)と例年のケニア研修よりも広範囲にわたる6都市を2週間かけて訪問しました。その中でも特に印象的だったのは、クワレとムビタでの研究施設見学や地元でのフィールドワーク、そしてヴォイでのサファリ体験です。
クワレでは、診療所(Dispensary)やケニア中央医学研究所(KEMRI)を訪れ、研究室を見学したり、WIREシステムの入力作業を体験したりしました。WIREシステムは、地域住民の健康データを記録し、疾病の早期発見や感染症対策に役立てるものです。現地で活用されているこうした技術に直接触れることで、日本とは異なる視点での医療提供の在り方を学びました。
ムビタでは6泊し、マラリアやスナノミ症に対する知識を深めました。また、地域の医療ボランティアを対象としたトレーニングに参加し、現地で医療リソースが限られている中でも効率的に診療や保健指導が行われている様子を目の当たりにしました。たとえば、ボランティアたちは住民へのマラリア予防指導や診断キットの使用方法を習得しており、医療従事者の不足を補っています。このような仕組みは、日本の高度に専門化された医療体制とは対照的でした。研修の合間には、ビクトリア湖に沈む夕日を眺めながらの夕食でホッと一息。美しい景色を前に疲れも吹き飛び、次の日へのやる気が湧いてきた時間でした。
サファリ体験ではヴォイにあるツァボ国立公園に行きました。日本の四国よりも広大な土地に、様々な動物がいます。特に印象的だったのは、「Red Elephant」と呼ばれる赤い土に染まった象たちの姿です。彼らはツァボの象徴的な存在であり、壮観そのものでした。このサファリ体験は、自然環境と感染症のつながりについて考えるきっかけになりました。動物が病原体を媒介する可能性や、生態系の変化が感染症拡大に影響すること、さらに気候変動が感染症の分布を変えることなど、自然と人間の健康が深く関わり合っていることを実感しました。自然との共存の重要性を改めて考えさせられる時間でした。
今回の研修を通じて、座学で学ぶ知識と実際に現場で体感することの違いを痛感しました。たとえば、教科書で「医療リソースが不足している」と学ぶのと、現地で人々が限られた資源を最大限に活用し、知恵を絞って医療を提供している現場を見るのでは、その重みが全く異なります。現地の空気や生活に触れ、感染症対策の難しさや住民の生活に根付いた解決策の重要性を直接体感できたことは、私たちにとって大きな成長の機会となりました。
私たち熱帯医学研究会では、海外研修以外にも様々なプロジェクトを運用しています。これからも現場での学びを大切にしつつ、新たな知識や技術を取り入れていきます。来年はさらに多くの地域や人々と関わり、熱帯医学に貢献する活動を広げていきたいと思っています。活動に興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にご連絡ください!